01 所有権の完全な行使を妨げる一切の負担は除去しなければならない
通常の不動産売買契約では、買主は、その不動産を使用や収益を出す目的で買い受けます。家やアパートを建てたり、駐車場にしたり、その用途は様々です。ですが、買い受けた後で実際に使用しようとしたときに何かしらの制約により、思うような使用ができなければ、そもそも買い受けた意味がなくなってしまいます。その制約の中で代表的なものとして「抵当権」の設定があります。売主が、何らかの債務(金銭の借入など)のために、その不動産を担保として抵当権を付けていた場合、売主の借入金の返済などが滞れば、抵当権をもつ者は、その不動産を差し押さえて処分し、得られた金銭を債権に充当することになります。こうなってしまっては、不動産の買主としてはせっかく買った不動産を取り上げられてしまうこととなります。その他に、買主の自由な使用を妨げるものには、「賃借権」、「地上権」、「地益権」などがあります。一般的な不動産の売買契約では、売主は売買代金全額を受領するときまでに、「買主の所有権の完全な行使を妨げる一切の負担」を除去するように義務付けられています。もしも、これを除去せずに引き渡すようなことがあれば、「債務不履行」となります。契約に違約したことになりますので、損害賠償請求を受けたり、最悪の場合「契約解除」をされてしまいます。
02 抵当権を抹消するには登記が必要
不動産の所有権を、土地などに直接書いておけないのと同様に、抵当権も目で見て分かるものではありません。通常は、金融機関などから借り入れをする際、金銭消費貸借契約と同時に抵当権設定契約を締結し、それをもとに抵当権設定登記がされます。ですので、その不動産に抵当権が設定されているか否かは、不動産登記簿謄本をみれば一目で分かります。抵当権を設定する際は、手落ちがあれば金融機関側も困るので、手取り足取り、親切丁寧にその手続きを指南してくれます。しかし、反対に抵当権を抹消するときは、たとえその手続きが遅れても金融機関側が困ることはないため、あまり丁寧には教えてくれません。一切の債務を返済し終わると、債権者から抵当権を抹消するための書類が交付されます。 弁済証書や借用書です。よく誤解されている方が多いのですが、これらの書類を債権者から預かっただけでは、抵当権の登記が消えることはありません。抵当権設定登記を抹消するためには、これらの書類を添付し、法務局で抵当権の抹消登記を申請する必要があるのです。
03 権利関係の不動産登記は司法書士の専門分野
不動産の売却のために、借入金の返済を終わらせ、土地等の不動産の売却をする際は、上で説明した抵当権抹消登記に必要な書類を取り揃え、自ら法務局へ申請することも可能です。しかし、売却代金を返済額に充て、抵当権を抹消するということになると、所有権の移転登記とタイミングが重なり、複雑になってしまいます。そこで、通常は売却代金を受け取る際に、不動産登記の専門家である司法書士に立ち会いを頼み、所有権の移転や登記及び抵当権の抹消登記を一括して委任します。ちなみに、この立ち会いの席には、通常、抵当権者である金融機関の担当者も同席します。なぜなら、売却代金の全部又は一部を支払ってもらわなければならないからです。よって、金融機関側はこの席に、先んじて弁済証書や借用書を取り揃えてやってきます。無事に決済が終わったことを確認すると、金融機関側はあなたが委任した司法書士に弁済証書等を渡します。司法書士がそれを取りまとめて法務局へ登記申請するのです。いかがでしたでしょうか? これらの手続きをしっかり理解した上で、専門家の力を借りながら慎重に対応していく必要があります。トラブルのない不動産取引を行うためにお役立て下さい。